アーチェリーの講習に行ってきた

目黒の区民センターには、アーチェリー場があるという。
利用するには、経験を証明する物か、そのアーチェリー場での初心者講習会に参加する必要がある。
講習は全五回で、一回二時間だ。
料金は講習代が全部で三百円と、激安。
その他に施設の利用料が毎回かかるが、それも二百円と激安だ。


講習会の最初は、会議室のような部屋で長机を囲んで始まった。
指導員の簡単な挨拶が済んだ後、メンバー同士の自己紹介が始まる。
どこから来た何々ですって感じに簡単に済ませた。
講習会に参加する面子は全部で九人、男が六人に女が三人だ。
男の内、五十代が二人、他四十代が二人、二十代が俺ともう一人だ。
女の方はよくわからない、たぶん二十代が二人に三十代が一人。
男の中にかなりのイケメンが一人居た、もちろん俺のことじゃない。
あえて言うなら俺の対極に位置する感じだな、くそ、ぜってぇ仲良くなれねぇな。
イケメンでアーチェリーとかいって、無敵だなおい。
まぁ遺伝子の不運をここで愚痴っても仕方ない。
自己紹介の後はアーチェリーをやる上でのルールとマナーの説明となる。
人に向けて撃たないとか、まぁ、あたりまえの話しだ。
弓矢は元々相手を殺傷する目的で作られたものだ、鉄砲を相手に向けるなとか、刀剣の刃先を相手に向けるなってのもあたりまえの話し。
そこらへんをよく弁えろって事と、射撃中の射場に入るなってのもあった。
矢を抜く時は射場に入らなければならないが、その時は同時に撃ち始めた人が撃ち終わるまで待って、皆で行くようにって話しだ。
それから、矢を抜く時は後ろを確認するように、と言われて、少し疑問に思った。なぜか?と
それも考えてみれば在りうる状況で、ターゲットに綺麗に刺さってる矢を、野次馬が覗き込んでたりするかもしれないってことだ。
そういった話しが済むと、次はフォームの話に映る、フォームの説明は言葉だけでは伝えづらいので、今は珍しいスライド映写機とラジカセが使われる。
壁に映った画像にラジカセの音が加わり、そこに指導員が簡単な説明を交える。
スライドでの解説が終わると、実際の弓矢を使っての説明が始まる。
これを後に握るのかと思うと、胸が高鳴る。
フォームの説明は、射方八節という日本の弓道と似たようなものが使われる。
一つ一つの型を、詳しい解説を交えながら聞く。
一通りの解説が済むと、場所を変えて洋弓場へ。
そこには弓が並んでいるが、弓を手に取る前にまず、準備運動をして肩をならす、それから簡単な防具を身につけ、そして腕の長さに応じて矢と矢筒をあつらえる。
そしてお待ちかね、弓を手にする。
以前に和弓を手にした事があるが、和弓と比べて洋弓は手にしっくりと馴染むように、握る部分がまるで銃のグリップのようになっている。今回使う弓は貸し出しでも使えるものだが、この弓は洋弓でよく見るようなゴテゴテした装備はついていない。まぁ貸し出し用のものだし、ついてても使いこなせないだろう。
そしていざ、射撃が始まる。和弓と比べて洋弓のいいところは、はじめてすぐ撃てるって事だ。和弓はまずゴムの弓もどきでフォームの練習を何日もする。しかも板間に素足で。冬の板間は寒かったなぁ・・・。
初めてということでまずはターゲットから六メートルの地点に立ち、指導員の合図に合わせて射撃をはじめる、各人好き好きに撃つ。そこに指導員が寄ってきて、フォームはこう、と直してくれる。
俺はフォームを一つ一つ確認するように、確実に矢を放った。
どうやら俺が一番遅いみたいだ、でもまぁ焦っても仕方ないし、六本の矢を大事に放った。
全員撃ち終えた所で矢を回収、後ろを確認して矢を抜く。着弾点がばらけてる上に中心に当たらない、思ったより難しいが、とても楽しい。
何度か射撃を繰り返し、慣れてきたと見たのか、射撃地点を六メートルから十メートルに移す。
ターゲットに当たりはするのだが、まだまだど真ん中とは行かない。
そこに指導員がこう言う。そんな怖い顔しないで、アーチェリーはスポーツですから、楽しんでやりましょう、と。
言われて思い出した、スポーツには心構えが大切で。道具は気持ちを反映すると。
俺は真っ直ぐにターゲットを見つめて、ある一つの感情で胸を満たし、心の中でこう叫びながら矢を放った。
(死ね!!!!!)
この時の俺はかなり怖い顔をしていたと思う。
俺の手から放たれた弓は真っ直ぐにターゲットに向かい、そして鋭い音を立ててターゲットの真ん中に突き刺さった。
自分でも意外な結果に、驚きと高揚が交じる。なかなか爽快だ。
誰に対しての呪詛ではないのだが、やはり道具は気持ちを形に変えてくれるようだ。
同じようにしてまた矢を放った、が、そう都合よくはいかないもので、集弾率は上がったものの、再度真ん中に刺さることはなかった。
講習の終了時間までそうして矢を放ち、最後に全員集まって挨拶をして解散となった。
次回が楽しみだ。